積水ハウスで、夢をかたちに。

憧れをかたちに、はできなかったけど、3社で迷い積水ハウスになりました。

家のコストに関する考察(6) まとめ

ハウスメーカー割高説の根拠

Youtubeやブログなどでよく見る「ハウスメーカー割高説」では二つの理由のどちらかが根拠になっています。

  • 営業経費、間接費が高い → 販売管理費(営業利益ー粗利益)
  • 利益をとりすぎ → 営業利益率を見る。 

これらの批判は妥当なのか?

個別案件ごとの数字は当然公開されていませんが、上場企業で投資家への情報開示に熱心な会社は、注文住宅部門としての販売管理費や営業利益率は公表しています。

 

工務店については少し古いアンケートである程度の水準感がわかります。

 

 

これらを比較すると、

  • 営業利益率で見ると、大手ハウスメーカーでも苦戦しているところが多い。儲けすぎという批判は当たらない。(ただし積水ハウスは好調で、5%程度利益率が高いと言ってもよさそうです。)
  • 粗利益率でみると、ハウスメーカーの方が平均的な工務店よりも5%-10%程度は高そう。
  • 広告宣伝費は1%ぐらいにしかならない。

ということで、モデルハウス、営業マン、広告宣伝費のコストが載ってしまうという批判はある程度はあたっている、といえるでしょう。

ただし、粗利益を5-10%削ったとしても大手ハウスメーカーで100万円の坪単価が90万円~95万円になるかどうか、中堅ハウスメーカーで70-80万円の坪単価が、63万円~76万円になるかどうか、といった感じです。

多くの人がイメージするハウスメーカー工務店の単価の差はもっと大きいでしょう。もしそれが事実だとすれば、原価に違いがあることになります。モデルハウスや宣伝費があるからハウスメーカーが割高だ、というのは間違いでは無いけれどミスリーディングだと考えます。

 

原価に影響を与える要因

販売管理費だけでは大きな差がつかないということがわかったので、家を建てるために直接必要な原価に関して、ハウスメーカー工務店の間にどのような違いが生じ得るか、可能性を探ってみます。

価格面でハウスメーカーが有利

大量発注により建築資材価格・設備の仕入れ価格を抑えられる。

大量発注できることのメリットは、ハウスメーカー選びの中で大いに実感しました。特にわかりやすいのが設備価格です。設備は注文住宅だけでなく建売、賃貸用マンション、分譲マンションなども含めた建築戸数が多い会社ほど、メーカーとの取引条件が良くなりやすい傾向があるように感じました。

積水ハウスヘーベルハウスダイワハウス住友不動産あたりは戸数が多いメーカーと言えそうです。一方で住友林業は注文住宅だけをみると最大手の一角ですが、建売、賃貸、マンションなどをあまり手掛けていないので、総戸数という点では見劣りします。三井グループでみれば分譲マンションを活発に行っていますが、別会社になっているために三井ホームも、スケールメリットを享受しきれていないように感じられます。

自社で製造している建築資材についてはマージンが少ない。

大手ハウスメーカーでは構造材を自社内で製造しているところも多くあります。積水ハウスを例にとれば、構造材に加えてアルミサッシ、ベルバーンやダインコンクリートのような外壁材など、本体価格に大きな割合を占める建材が自社生産になっています。

 

プレカットの資材を外部のメーカーから購入している工務店と比べると、マージンが少なくなる分、有利になるはずです。

 

スケールメリットを活かした効率的な工法が採用できる。

積水ハウスの鉄骨住宅で使われるダインコンクリートを例にとると、非常に重いプレートを重機を使って一気に壁に掛けていきます。外壁材として優秀であるだけでなく、工期の大幅な短縮にも貢献しているはずです。

安定して年に数千戸の需要があるから、ダインコンクリートを手の届く価格で製造し設置していくことができるわけで、年に10戸、20戸といった単位でこうした素材や工法を開発したり使ったりすることはほぼ不可能と言えるでしょう。

 

価格面で工務店が有利

施工管理の重複が無い。

ハウスメーカーで建築する場合、ハウスメーカー供給する資材を使って下請けの工務店が実際の施工するケースが大半です。下請けの工務店側にも現場監督的な役回りの人はいますが、ハウスメーカーの現場監督が複数の現場を掛け持ちで監理業務や、品質管理を行っています。

これに対して工務店が直接請け負う場合には、工務店の中で監理業務が完結することになり、人件費削減が可能になります。ただし、工務店側の施工の質、および品質に関する考え方によっては、結果に大きなばらつきがでてくることでしょう。

工務店の方が人件費単価が安いことが多い。

原価の中では資材費と並んで人件費が大きな割合を占めます。ハウスメーカーで建設する場合には、施工は下請けの工務店しても、原価の中に現場監督をはじめとしてハウスメーカーの社員が関与する部分も存在します。ハウスメーカーの人件費は中小企業である工務店と比較すると高くなると考えられ、仮に同じ工数だったとしても、その分だけ工務店の方が原価を抑えられることになるでしょう。

コストパフォーマンスが良くても大量に仕入れることができない資材も使える

ハウスメーカーは毎年何千軒もの家を、安定した室で供給することが求められます。どんなにコストパフォーマンスが良い資材であっても、安定して手に入らなかったり、まとまった量が手に入らない資材、あるいは質にばらつきが多い資材は使えません。

これに対して、年に高々数十軒をたてるのであれば、資材調達の幅は格段に広がることになります。

良い例かわかりませんが、スターバックスで使ったり販売したりする豆と、独立系のコーヒーロースターで販売する豆に求められるものの違いと似ていると感じました。

法令順守、レピュテーションリスクなどのためのコストが小さい

仮に一万分の1の確率で大きな問題がおきる商品があったとします。その商品を年に50個売るとすれば、約200年に一回しか問題が起きないことになります。これに対して、年に1万個売るとすれば、1年に1回問題が起きることになります。

(実は数学的にはこの計算は正しくありませんがイメージとしてはずれていないので、このまま続けることにします。)

また大手ほどトラブルが発生した際のレピュテーションリスクが大きく、炎上しやすいと言えるでしょう。

このことは、大手ほどトラブルを回避するために品質基準を厳しくしないといけないことを意味します。もともと高い基準をさらに上げるためには相応のコストが必要で、この部分でも工務店の方が有利なポジションにいると言えます。

似たような例ですが、グレーゾンにあるもの、業界の慣行と建前にずれがあるときにどう対応するか、という点でも中小企業の方が小回りが利くという側面もあります。例えば、「この現場だったら多くの業者はガードマン1人しかつけない。けれど、法律を厳密に守ると2人つける必要があり、大手の看板出しながら守っていないと通報され問題になるケースも多いので、うちは2人つける。」といったはなしです。

特徴を比較すると?

双方を比較すると、人件費の単価が高い点は大手が不利だが、質のばらつきが小さいというメリットにもつながっているはず。その他で工務店側が有利な点は、質とのトレードオフにつながるリスクを抱えている。またスケールメリットは相応のインパクトがあるはず、ということで「同じ品質で工務店の方がコストが安くなるべき」とは感じられませんでした。

 

まとめ

だらだらと書いてきましたが、経営数値を調べてみても、一般論としてみても、「同じ品質でも工務店の方が大幅に割安。」という仮説に対して説得力のある説明は難しいのでは、というのが結論です。

特に中堅ハウスメーカー(除くローコスト)と設備のグレード、間取りなどの条件を揃えて比較したら、工務店が大幅に割安とは限らないどころか、中堅ハウスメーカーの方がコストパフォーマンスが良いのではないだろうか、という印象すら持ちました。

 

ただし、質をスペック(UA値、C値、耐震等級など)だけで定義すれば、その部分に特化することで、大幅に安いコストで、より高いコストの家のスペックを上回る、といったことが簡単に起こりえます。

断熱・気密に対する関心が高いのを利用して「うちは、高性能の家を安くつくれます。」といったアピールも目立ちますが、これは、出力(ワット数)だけでオーディオのアンプの評価をしたり、加速性能だけで自動車を評価したりするのと同じだと感じます。

家は住むものであり、スペックは住みやすさに影響を与える材料の一つでしかないからこそ、スペック競争とは違った物差しで評価すべきだし、総合的にみれば、やはり良い家をつくるにはそれなりのコストがかかる、という事実を直視すべきなのだと思います。

ただし、自分にとって必要のない機能や性能、あるいは自由度・デザイン性などをそぎ落とすことができれば、自分にとって大事なものを残しながらもコストパフォーマンスの良い家づくりは可能だとも感じます。