積水ハウスで、夢をかたちに。

憧れをかたちに、はできなかったけど、3社で迷い積水ハウスになりました。

家のコストに関する考察(5)工務店の場合

コストを下げる、という観点からは地場の工務店を考える方もいると思います。ここでは、一般社団法人 木を活かす建築推進協議会 により、平成29年3月に発表されたアンケート調査(工務店実態調査アンケート報告書)を引用しながら、工務店の実態を調べてみたいと思います。

 

アンケート調査のサンプル

このアンケート調査は、7300社に配布され、38.1%にあたる2778社からの回答をもとに構成されています。なお、1986社が工務店、764社が一人親方となっており、今回は工務店(除く一人親方)に焦点をあててみていきます。

平成28年はどんな年だったか

アンケートは平成28年(2016年)の実態を反映していると考えられます。住宅産業新聞の調査結果によれば、2016年の大手ハウスメーカーの坪単価は今より3割近く安かったようです。

どのような工務店が候補になるのか?

全国に工務店の数は1万近くあると言われています。このアンケート調査でも配布予定数は9703工務店と、ほぼそれに近い数字になっています。しかし、アンケート調査を見ると、他の工務店ハウスメーカーなどの下請けに特化しており元請をしていない工務店、リフォームに特化した工務店なども多いようです。

このアンケートの良いところは、回答を元請戸数に応じてグループ化した分析も行っている点です。具体的には、元請数が1-4戸(454社)、5-9戸(110社)、10-19戸(94社)、20-49戸(64社)の4グループにわかれています。なお合計数が1986社よりも大幅に少ないのは、元請け新築住宅戸数が0の工務店、同 50 戸以上の工務店、新築住宅の施工といっても下請けを専門としている工務店、リフォームを専門としている工務店などが集計対象から外されたためです。逆に以下のグラフに示されるように、元請戸数が多い工務店は、大工工事を外注する比率が高く、階層化された構造がわかります。

大工工事を通常行っている形態

ハウスメーカーと地場の工務店を比較する人は、地場の工務店にも相応の規模と質を求めると考えてよいでしょう。

ここでは、規模の指標として元請戸数を使うことに資、年に10戸以上の建築実績がある工務店が候補になると考えることにします。すると、アンケート回答件数2778件のうち、160件(回答件数の5.8%)が該当することになります。

また、断熱・気密に対する意識がまだいまほど高くなかったとしても、2016年でも強く意識されていたであろう指標として耐震等級を家の性能の指標として使うことにします。今であればハウスメーカーは耐震等級3が当たり前になっていますが、7年ほど前ということも加味して、耐震等級2以上が必要最低限の質を満たしている、と考えることにします。

標準としている耐震仕様

すると、こちらのグラフにあるように、10-19戸のサンプルの約7割、20-49戸のサンプルの約65%がこの基準を満たすことにします。これを合計すると、約105サンプル(回答数の3.8%)となります。

施工地域なども加味して考えると、質とデザインを望む水準で提供してくれる工務店候補は意外に少なそうだという印象を持ちました。以降は請負戸数が10戸以上の工務店に焦点をあてて、その特徴を調べてみます。

坪単価と営業利益率

請負戸数が10戸以上の工務店の坪単価は、平均すると約57万円となりました。先ほどの表と比べると、積水ハウス住友林業の約70%、ミサワホームの約80%となります。従って工務店は大手ハウスメーカーと比較すると安いという常識は再確認できそうです。

ただし、この数字は性能が低い家を標準仕様にしている工務店も含めているので、最低限必要な性能で絞り込めば、差は縮まるでしょう。

また、現在のローコストおよび中堅ハウスメーカーと、高価格帯ハウスメーカーの関係を踏まえると、工務店はローコストよりは高く、中堅ハウスメーカーとはかぶるか、一部の中堅ハウスメーカーの方が安い、といった水準感になりそうです。

通常受注している標準的な戸建住宅

このアンケートでは、粗利益率も調べています。元請戸数10戸以上の工務店では、粗利益率が15%以上を確保できている割合が6割以上ありますが、ハウスメーカーに比較すると低め、と言ってよさそうです。

一方で粗利益率が10%未満の15-20%程度の工務店は、会社の持続性への懸念から、アフターサービスなどのことも含めて考えると、避けたい気がします。

粗利益率

工務店の工法

アンケートによれば、プレカットされた資材を使っている工務店が9割、さらに資材に占めるプレカット比率が9割以上の工務店が請負戸数10戸以上の工務店の8割強を占めるようです。

プレカット工場の詳細な利用率

工務店は伝統的な工法で現場でほとんどの作業をしながら建てていると思っていたのですが、先入観が覆されました。

ハウスメーカーで建築をしても、実際には下請けの工務店が建築にあたる例が多いこととあわせて考えると、ハウスメーカー工務店の間で、建築現場に関しては思ったよりも違いがなくなっている、ということかもしれません。

 

ざっと調べてみると、2X系工法に近いと思われる「FPの家」、シャーウッド(積水)やビッグフレーム工法(住友林業)に発想が近いと思われるSE工法など、工務店向けに工法と資材を提供する商用プラットフォームがいくつかあるようです。

 

 

こうしたプラットフォームと契約した工務店であれば、性能のばらつきなども抑えられそうです。これはハウスメーカーと、従来の工務店の中間に位置するグループになりそうですが、価格的にもあがりそうですね。

工務店について調べて感じたこと

粗利益率を比較すると5%-10%程度の差は出そうですが、「販売管理費が小さいから、工務店ハウスメーカーよりもずっと安くできる。」というのは疑問に思えます。平均的な水準でみても、対高価格帯ハウスメーカーはいざしらず、中堅ハウスメーカーと比較すると大きな価格優位性は得にくいのではないでしょうか?

一方で、もともとプレカット比率が高い中で、SE工法や、FPの家といった仕組みを利用すれば、品質・デザインの自由度の双方でハウスメーカーと対抗できる家を安定的に工務店がつくる仕組みは整っていそうです。この場合は、コストも相応に上がりそうですが・・・。

ハウスメーカーであれば担当ガチャがあることも踏まえて考えると、信頼できる建築士に設計をお願いでき、新しい工法を使いこなせる信頼できそうな工務店が見つけられれば、価格的には安くないけれど、建築士工務店で建てる。というのは選択肢としてはあるのかな、という気がします。