積水ハウスで、夢をかたちに。

憧れをかたちに、はできなかったけど、3社で迷い積水ハウスになりました。

家のコストに関する考察(4)中堅HM、ローコストHM

引き続き、家のコストに関する調査です。前回の記事では、大手ハウスメーカーの代表として、積水ハウス住友林業中心に見てきました。

 

今回は、中堅ハウスメーカーおよびローコストハウスメーカーの代表として、まず桧家住宅、タマホームを取り上げたいと思います。この二つのメーカーを選んだのは、どちらも上場企業で売上高、営業利益が公表されているからです。

 

家づくりのコンサルタントをしている方の推測・経験ベースの数字を使えば、より多くの会社をカバーできますが、サンプル数が少なかったり、サンプルに偏りがあったりすることで、客観性の低い欠点があります。従って、今回の一連の整理では、できるだけ公表ベースの数字、あるいは客観性が高い数値を使いたいと思います。

 

桧家住宅

印象的な広告もあって、Z空調が非常に有名になった桧家住宅ですが、2020年にヤマダホールディングスの子会社(持分50.1%)になり、2022年に完全子会社(持分100%)になっています。

宅建設セグメントの中の桧家グループの売上高は約1347億円、営業利益は約73億円でした。ただしこの数字には不動産投資事業、断熱材事業、およびレスコハウスなど桧家ブランド以外の住宅建設の業績も含まれています。

ヤマダホールディングスには、ヒノキやグループに加え、ヤマダホームズと、ハウステック(キッチン、バスルーム、洗面などの設備メーカー)という子会社も持っており、これらを含めた住宅建設セグメントの売上高は2724億円、売上総利益は647億円、営業利益は85億円でした。

 

(100万円) セグメント ヒノキヤG ヤマダホームズ ハウステック
売上高          272,360                 134,718                   78,360             60,436
売上総利益            64,705      
販売管理費            56,129      
営業利益              8,576                    7,288                       351               2,297
売上総利益 20.6%      
営業利益率 3.1% 5.4% 0.4% 3.8%

 

子会社ごとの売上総利益は発表されていませんが、各子会社ごとの営業利益率をみるとヒノキヤグループが最も高い利益率を持つことがわかります。このことから、ヒノキヤグループ単体での売上総利益も、セグメント全体の売上総利益20.6%を大幅に上回ることになります。

仮に販売管理費が売上高に比例すると仮定して、3社間に販売管理費を案分したうえで売上総利益率を計算すると、ヒノキヤグループの売上総利益率は25.9%となり、積水ハウスとほぼ同じ水準になります。また住友林業よりも高い総利益率を誇っていることになります。

このことから、中堅ハウスメーカーと高価格帯のハウスメーカーの価格の差の説明を、儲けや販売管理費の差のみに求めるのは誤りと言えます。原価部分に大きな違いがあると考えるべきでしょう。

なお、印象的な広告が目につくにも関わらず、広告宣伝費はグループ全体でみると216億円で、家電セグメントなどを含めたグループ全体の総売り上げ1兆6006億円に占める割合は1.4%とさほど高くありません。ただし、家電量販セグメントに比べて、住宅建設セグメントの広告宣伝費率が高い可能性は大いに考えられます。

また、上の表を丁寧にみると、3社の営業利益の合計がセグメントの営業利益よりも大きくなっていることがわかります。この「食い違い」は売上高ではほとんど起こっていません。いくつかの要因が考えられますが、3社間の取引に伴う利益がそれぞれの会社で重複して計算されており、セグメントレベルでその分の調整が行われていると考えるのが自然です。

この仮説を信じるとすれば、グループ内取引が盛んであることを示唆しており、特に住宅メーカーであるヤマダホームズや、ヒノキヤグループが、住宅設備メーカーであるハウステックから設備を購入しているパターンが考えられます。こうした設備メーカーの内製化も、原価低減に成功している要因の一つかもしれません。

なお、ヒノキヤホームズは、関東を中心に直営でカバーする地域と、北海道・四国・九州・中国地方などFC方式でカバーする地域とがあるようです。また協力会社の募集ページを見ると、現場管理のデジタル化など、システムを介した現場監督のコミュニケーションなどが採用されているようです。これらの効率化策を通じたコスト削減の工夫が、原価低減に貢献しているのかもしれません。

 

タマホーム

タマホームは、売上の約80%が住宅事業、そして不動産事業も含めると売り上げの95%以上を占める会社です。セグメントごとの情報開示が少ないため、会社全体の業績を調べました。以下は2023年5月期(通期)の業績です。

 

(100万円) 2023年5月 対売上比率
売上高 256,065  
売上原価 194,428 75.9%
売上総利益 61,637 24.1%
販売費及び一般管理費 48,372 18.9%
営業利益 13,264 5.2%

 

売上総利益は24.1%と、積水ハウス、ヒノキヤグループ並み、営業利益率も5.2%とヒノキヤグループ並みで、住友林業パナソニックホームズなどと比べるとずっと良好な数値です。

なお、住宅建設業界広告宣伝費ランキング2023 | リビンマガジンBiz (lvnmag.jp)によれば、タマホームの2023年の広告宣伝費率は4.1%です。

つまり、タマホームが安い理由は、販売管理費や利益を削ってるからではなく、原価が安いから、ということですね。

 

ここまでのまとめ

中堅、そしてローコストハウスメーカーも、

  • 粗利益率は25%弱とれている。(原価率は75%強い)
  • 営業利益率も5%前後とれている。
  • 大手ハウスメーカ―と比較しても収益率は同水準かそれ以上

ということがわかりました。ローコストメーカーは薄利多売のイメージを持っていたものの、きっちりと利益をとっているし、間接費もかけているという点には驚きました。

別の角度からみれば原価低減のすさまじさ、と言えるでしょう。この原価低減が資材調達・製造・建築過程の合理化を通じて成し遂げられたものなのか、あるいはグレードを落とすことで成し遂げられたものなのか、そしてもしグレードを落としているとすれば、無駄な贅沢を省いているのか、それとも満足度や機能性、性能に大きく影響を及ぼすものなのかが焦点になりそうです。

この点については順を追って考えたいと思います。