積水ハウスで、夢をかたちに。

憧れをかたちに、はできなかったけど、3社で迷い積水ハウスになりました。

断熱について考える(2):窓・サッシ

アルミ樹脂サッシって本当にダメなの?

家づくりに詳しいYoutuberさんの話を聞いていると「アルミ樹脂サッシは時代遅れ、ありえない。」という気にさせられます。もう少し見ていると、アルミ樹脂でもまあ場合によってはいいんじゃない、という方、あるいはアルミ樹脂擁護派のLIXILなどもありますが、不安になりますよね。

 

今回のテーマは、アルミ樹脂に落ち着いた私たちが、サッシについて検討したり、考えてきたことのまとめです。

 

私は、断熱等級やUa値は良ければ良いに越したことないけれど、有限の予算の配分や、その他のニーズとのバランスを考えると、断熱等級5がクリアできれば、あとは他の部分で補えるのでは?、と考えてます。この理由については前回の記事にまとめました。

 

building-dream-home.hatenablog.com

この点で、「いや断熱等級6は必須、あるいは7を目指すべき。」と思う方は、この記事は全く役に立たないと思います。

断熱性に一番影響があるのは窓

省エネルギー基準に即した家でアルミサッシの場合、熱が家からどの経路で出入りするかいくつかの試算があります。

日本建材・住宅設備産業協会によるシミュレーション

https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/assets/v0/img/general/housing/01/img06.jpg

YKK APによるシミュレーション

こちらのシミュレーションはYKK APのホームページを引用させていただきました。

https://www.ykkap.co.jp/info/pvc-windows/q/img/02_img_03.gif

※上記数値は、YKK AP算出です。
窓からの熱の流入出比率の算出条件【解析No:00033】(2021.7.1更新)
●使用ソフト:AE-Sim/Heat(建築の温熱環境シミュレーションプログラム)/(株)建築環境ソリューションズ ●気象データ:「拡張アメダス気象データ」2010年版 標準年/(一社)日本建築学会 ●住宅モデル:2階建て/延床面積 120.08㎡/開口部面積 32.2㎡(4~8地域)「平成25年省エネルギー基準に準拠した算定・判断の方法及び解説Ⅱ住宅」標準住戸のプラン ●躯体:平成28年省エネルギー基準レベル相当 ●窓種:アルミ(複層ガラスA8未満) ●環境条件: 冬:外気温:2.6℃、室温:20℃ 2月14日 5〜6時(日平均外気温最低日)、東京

夏の暑さの伝わり方

※上記数値は、YKK AP算出です。
窓からの熱の流入出比率の算出条件【解析No:00033】(2021.7.1更新)
●使用ソフト:AE-Sim/Heat(建築の温熱環境シミュレーションプログラム)/(株)建築環境ソリューションズ ●気象データ:「拡張アメダス気象データ」2010年版 標準年/(一社)日本建築学会 ●住宅モデル:2階建て/延床面積 120.08㎡/開口部面積 32.2㎡(4~8地域)「平成25年省エネルギー基準に準拠した算定・判断の方法及び解説Ⅱ住宅」標準住戸のプラン ●躯体:平成28年省エネルギー基準レベル相当 ●窓種:アルミ(複層ガラスA8未満) ●環境条件:夏:外気温:34.8℃、室温:27℃ 8月5日 14〜15時 (日平均外気温最大日)、東京

窓の影響が一番大きい

どちらのシミュレーションも、夏・冬ともに窓から伝わる熱が最も大きいという点で共通しています。これらの試算の前提は省エネ基準、アルミサッシです。

省エネ基準時代と比べると断熱材については素材の変化は少なく、密度を高め厚くすることで徐々に性能を上げていく感じだと思います。それに対して、窓は

  • サッシ:アルミ→アルミ樹脂→樹脂
  • 窓:単板→複層→複層Low-E→トリプルLow~E
  • 窓:乾燥空気→アルゴンガス→クリプトンガス

と選択肢が広がり、アルミサッシから高性能サッシに換えることで大幅に性能をアップすることが可能になります。

 

アルミサッシ+単板ガラスの熱貫流率が約6.5と言われています。下の表は代表的なサッシの熱貫流率をまとめたものです。実際には、同じ製品の中にもいろいろなバリエーションがあるだけでなく、窓の大きさが変わればガラス部分とサッシ部分の比率も変わるため、数値が変わってきます。こちらは代表的な数値として考えてください。

 

サッシ モデル 熱還流率 備考
アルミ 複層ガラス 4.07  
アルミ樹脂 AJサッシ 2.27  
アルミ樹脂 SAJサッシ 1.66 ペア、アルゴンガス
樹脂 APW330 1.37 アルミスペーサー
樹脂 APW430 0.9 トリプル

(*) APW330, 430についてはYKKのカタログから、それ以外はブログの情報を引用させてもらっています。

 

これによれば、単板ガラス+アルミサッシを、APW430(樹脂サッシ、トリプルガラス、アルゴンガス)に換えると、失う熱が約7分の1になることになります。ペアガラス+アルミサッシとの比較でも、熱損失を半分以下に抑えられるので、劇的な効果があります。この改善効果をみれば、

  • 断熱性能を考える上では、まずサッシ性能にこだわるべき
  • 断熱性の高いサッシを採用した家の場合、上の試算と比べれば窓からの熱流出入は大幅に削減されているはず。この場合、壁など他の部分の断熱性能を上げることの重要度が増してくる。

と言えそうです。

性能を上げなくても、窓の面積を減らせば断熱性は上がる

断熱材が10cm程度入った外壁の熱貫流率は0.5前後のようです。上の表では最強のAPW430と比べても熱の流出入は半分強に抑えられます。

と言うことは、断熱性能にこだわるのなら、窓面積をできるだけ減らすのが良いわけです。大開口の家、床から天井までの窓、などかっこいい(?)デザインを追求した上で断熱性能を求めるから、窓の性能が一層重要になるのであって、日射取得も含めた機能面で必要最小限の窓に絞ることが、Ua値を追求したい人がまずやるべきことだと思います。

サッシか、ガラスか

1m✖️1mの窓と2m✖️2mの窓を比較すると、面積は1平米と4平米で4倍。サッシの長さは、4mと8mで2倍になります。

1m✖️1mの窓と1m✖️2mの窓で比較しても、面積は2倍、長さは1.5倍です。

 

要は大きな窓になればなるほど、サッシ部分の面積よりガラスの部分の面積の増え方が大きいので、ガラス部分の性能の貢献度が大きくなりやすい。ということです。それぞれの部分の性能値や面積をもとに計算してみないとなんともいえないところではありますが、大きな窓の場合、アルミ樹脂サッシでもトリプルグラスにしていれば結構いい仕事してくれるかも、と期待したくなりますね。

似た話では、樹脂サッシの方がアルミ樹脂サッシより単位面積あたりの熱貫流率は低いのですが、樹脂サッシはアルミ樹脂サッシよりもサッシ幅が大きいので、素材の性能ほど差が出にくい、という面もあるようです。

 

樹脂サッシでは大きさに制限がある

積水ハウスは2.7mの天井高にたいして、床から天井まで2.7m弱の高さがあるSAJサッシ(アルミ樹脂)が利用できます。しかし樹脂サッシの代表格であるAPWシリーズでは、最大高さは2270mmまでのようです。

 

別のハウスメーカーからの間取りプランでも、他の多くの窓は樹脂サッシのAPW330(このハウスメーカーはこれが標準です)を使っているのに、間口が広い大開口窓用にAPW511シリーズの提案がありました。APW511はアルミ樹脂サッシです。できることなら樹脂サッシに揃えたかったので変更をお願いをしたのですが、こちらも樹脂サッシでは同じだけの間口をとれないので、アルミ樹脂サッシを使っているとのお話でした。

 

アルミの方が樹脂より強いので、樹脂サッシはアルミ樹脂サッシよりもサッシ部分の幅を太くして強度を確保していますが、それにも限界があるということですね。ある程度以上の大きさの窓をとりたい場合には、樹脂サッシをあきらめるか、あるいは大きさを諦めるかの二択になります。

 

断熱性能の差をどう考えるか?

SAJサッシとAPW330を比較すると、断熱性能の差は約20%。大きいといえば大きい。けれどAPW430まで行くと、更に40%ほど性能があがるので、どうせならそこまでいってしまいたい気分になりますが、コストもとんでもなくなりそう・・・。

 

サッシ モデル 熱還流率 備考
アルミ樹脂 SAJサッシ 1.66 ペア、アルゴンガス
樹脂 APW330 1.37 アルミスペーサー
樹脂 APW430 0.9 トリプル

 

家全体の断熱性能や、冷暖房費の差で考えると、SAJサッシとAPW330の20%の差はあまりきかないのではないか?でも、局所的に窓の近くの感じ方は結構ちがうのだろうか?結露も気になるし・・。

 

と、断熱性能だけを切り出すと、考えがまとまりません。

 

最終的な判断

いろいろと考えてきたのですが、家づくりのコンセプトとしてデザインと性能のバランスで、性能に大きく振るのであれば例えば一条工務店を選んでいたと思うのです。あるいは中堅ハウスメーカーにお願いをして、性能面に予算を厚く配分することもできたと思います。

 

積水ハウス住友林業三井ホームといったハウスメーカーに惹かれていったのは、そして大開口の窓をどうしても採用したかったのは、このデザインと性能のバランスで、妥当な性能を確保しつつ、デザインや使い勝手など数字で測れない部分を大事にしたかったからだと思います。

 

もし、樹脂サッシでも窓の大きさ、ひいてはデザインに制約が無ければ、樹脂サッシを採用していたと思います。言ってみれば、できることなら樹脂サッシを選びたかったけれど、何が何でも樹脂ではない、という立ち位置に落ち着きました。

 

コスト面では、最終的に採用することになったSAJサッシと樹脂サッシでどの程度さがあるか、微妙なところです。口さがない人は、「大手HMが樹脂アルミ複合サッシを使い続けるのは、そちらの方が儲かるから。」とか、「樹脂アルミ複合の方が安くて売りやすいから。」などと言ったりもするようです。

しかし、積水ハウスのセカンドブランドで大幅に価格が安い積水ハウスノイエは、APW330が標準仕様です。これは、SAJサッシにも相当にコストがかかっている、という可能性を示唆するものだと思います。