積水ハウスで、夢をかたちに。

憧れをかたちに、はできなかったけど、3社で迷い積水ハウスになりました。

気密性について考えていること(1):C値と自然換気(漏気)回数の関係

C値はどの程度を目指すべきか?

積水ハウスと契約する際に鉄骨ではなく木造を選んだ理由の一つは、木造の方が気密性を高めやすいと思ったからです。現在の見積もりには気密施工オプションも追加しているし、気密検査を入れる了解ももらうなど、現段階で施主としてできることは概ねしたつもりです。

それでも大半の大手ハウスメーカーに言えることだと思いますが、C値で0.5を切る数字は期待できないと割り切っています。

私たちが求めているのは、「性能が最高だけれどデザインや間取りで我慢する家」ではなく、「性能面で十分条件を満たした上で、デザイン・間取り・使い勝手に思いをこめられる家」です。

では気密性の十分条件はどこらへんにあるのか、という点が難しいのですが、(大手ハウスメーカーにお願いした場合に)手が届きうる水準としてC値が1を切ってくれたらとりあえず合格、0.7~0.8ぐらいだったら嬉しい、といったレベル感で考えています。

でも、「C値1.0で本当に充分なの?」という疑問は残るわけで、今回はこれまでに集めた情報や雑感をまとめたいと思います。

断熱性に比べて、気密性はわかりにくい

断熱性はわかりやすい

断熱性(Ua値)はハウスメーカー工務店問わずきっちりと計算してくるので透明性が高いし、大抵の議論が断熱等級5で十分か6を越していくべきかの幅に収まります。モデルケースではあるけれど断熱性の違いが光熱費に与える影響も計算できるので、効果もイメージしやすい。

更に断熱性をある水準以上に高めようとすると、断熱材を厚くするとか、外断熱するとか物量投入が必要です。追加的に必要な資材コストだけでなく、壁が厚くなることにより有効に使える敷地面積が減るか、あるいは建坪を増やす必要がでてくるため土地代もかかります。

メリット・デメリットがわかりやすく、コストがかかる話なので、議論も落ち着くところに落ち着くのだと思います。

気密性はわかりにくい

これに対して気密性は理論値ではなく計測値です。施工手法と施工品質に依存する部分が大きく個別性が一段と高いので、じゃあ自分の家のC値がどうなるかとなった時に、建ててみて、(多くの場合自腹で)気密計測をしないとわからない。

Ua値であれば、設計段階から目標とする水準を決めて実現することができますが、C値に関しては、計測する段階でできることは限られている。

 

気密性が悪いことによる影響も、今一つ定かではありません。ざっと見る限り、いわれているのは

  • 換気のうち、計画換気の割合がさがる
  • 壁内結露のリスクが高まる
  • すきま風で寒くなる

といった弊害です。このうちの計画換気の効率に関しては、屋外の状況(温度差、風速など)とC値に応じて、計画換気の割合がどの程度さがっていくかを定量的に説明した文献はありますが、では計画換気の比率がさがった時にどういった弊害がどの程度おきるかは、あまり定かではありません。

他の条件が同じであればC値は低い(性能が高い)にこしたことはない、という点では誰もが同意すると思うのだけれど、「じゃあC値が1じゃなくて2だったら、何が起きてどれぐらいまずいのか。」という点には私は納得できる明快な答えを見出せませんでいた。

 

最も客観的な説明で、「C値が~~の時に計画換気の割合が**%になるので、最低これぐらいは確保しましょう。」というもので、ポジショントーク的なバイアスのかかったコメントが多いという印象があります。

 

気密性は丁寧に施工することで向上させやすい(あまり追加でお金をかけずに実現でできる可能性がある)ことから施主側も要求しやすいし、ハウスメーカーと差別化をしたい技術力のある工務店も主張しやすいということから、議論がもりあがるのかなと感じるのです。

私の立ち位置

私は冒頭にも触れましたが、「C値は1をきってほしい。けれど、0.5は無くてもしょうがないかな。」と思っており、気密性の重要性は認めているけれど、そのために気密性重視の建築会社選びをする必要まではないんじゃないか派、です。

ただし、本当にこれでいいのか?やっぱり、気密性は1じゃだめなんじゃないか、という思いを振り切るためにも、情報を整理したいという趣旨でこの記事を書いています。従って、1でも大丈夫、と言いたいというバイアスがかかっている可能性があります。

また第一種換気を採用するので、第一種換気を前提にした考察が中心です。

家全体を一つの箱としてみたときにどうなるか

こちらの図は外部風速、温度差、C値に応じて、どの程度の自然換気が発生するかを示しています。

この図はいろいろなところで触れられていますが、日本建築学会で1998年に発表された論文のモデルに基づいていると思われます。(全く同じ図ではないのですが、内容としてはほぼ同じです。)

www.jstage.jst.go.jp

論文では1種、2種、3種換気それぞれの場合で補正がされています。この補正では、他の条件が同じであれば、1種換気より2種・3種換気の方が自然換気が少なくなります。この点では2種・3種換気の方が優秀、といえそうです。

この論文は実験・シミュレーションに基づくモデリングが中心なので、換気システムの差が生じる理由までは触れていませんが、他の資料を見ると、家の中が負圧(3種)、または正圧(2種)になることで、家の内外の気圧差の影響が緩和されることが原因のようです。

また換気性能による差はC値に比例し、C値が5ぐらいであれば結構大きな差になるのですが、C値が0.5~1.5ぐらいでは影響が小さいので、ここでは無視することにします。

 

さて、この表で示しているのは一時間あたりの換気回数です。一時間あたりの換気回数といわれてもすぐにはピンときませんが、第一種、二種、三種換気を問わず、計画換気は二時間で家全体の空気を入れ替える量、ということになっています。これは、0.5回/時間に相当します。従って、0.5という数字を基準にして考えることができます。

 

家に隙間があったとしても、家の中と家の外の気圧が全く同じであれば漏気は起きません。下の図でいえば右図の温度差(ΔT)=0℃、外部風速0m/に対応しています。図の味方の説明は省略しますが、この時左の図から、C値がいくつであれ(自然)換気回数は0となるので、整合的ですね。

温度差が無くても風があるとき、風上は正の風圧が壁にかかり、風下は逆に負の風圧がかかるので、隙間があればそこから空気の出入りが発生しそうです。住宅が密集地であれば他の住宅が風よけになるし、広々とした場所にたっていれば風の影響をもろにうけるので、立地条件が3つにわけられています。

 

逆に風速が0でも温度差があると、ある程度の換気が発生するようです。温度の違いから家の内部と外部の間に圧力の差ができるためですね。タイヤの空気と同じで、温度があがれば膨張します。従って、暖かい方から冷たい方に圧力がかかります。

夏には負圧(家の中が気圧が低い)、冬には正圧(家の中が気圧が高い)ですが、夏の気温差は平均すればたかだか10度弱、これに対して冬の温度差は寒冷地でなければ20度弱といったところだと思います。従って冬の方が影響は大きそうです。

いずれにしても、住宅密集地を除けば、風速の方が影響があることがわかります。

 

この表は見にくいので、風速と温度差に前提を置いて、C値ごとの換気回数を上の表から読み取ったものです。松尾設計室からお借りしました。

「松尾設計室」からお借りしました。

住宅地の場合、C値1と、C値0.5の差は、計画換気と自然換気の比率でみて、

 

C値1.5 0.5/(0.5+0.15) = 76.9%

C値1.0 0.5/( 0.5+0.10)= 83.3%

C値 0. 5 0.5/(0.5+0.05) = 90.9%

 

となります。ここまでは事実の世界、と言いたいところですが、ややこしいことに、C値が1だと、計画換気の全換気量に占める割合が50%まで下がる、というグラフが結構出回っているのですね。

83.3%とか90.9%だと、結構頑張ってる、と思うのですが50%となるとうーん、となりますよね。どちらの資料を信じるかで結論が大きく変わってきます。

 

後者のグラフはいろいろな建築会社やブロガーの方に参照されていますが、どうやらもとネタは「社団法人北海道住宅リフォームセンター」のようです。ただし引用されたグラフはあちこちでみるのですが、元ネタそのものは見つけることができませんでした。

 

おそらくは、前提条件の違いでどちらも計算値としては正しい、ということだと思うのですが、私は出典が明らかで、バイアスがかかりやすい業界団体ではなく、学術論文として発表されているものを採用したいと思います。

 

従ってここでは、「C値が0.5だと90.9%計画換気だが、C値が1だと83.3%まで計画換気の比率が落ちる。」としたいと思います。

 

とりあえず思ったこと

この先は解釈の問題ですが、私は「C値は低ければ低いにこしたことはないけれども、1.0でも(なんならC値が1.5でも)、家全体としてみれば結構がんばっている。」と感じました。一番最初のグラフ左側のカーブの立ち方をみると、C値2ぐらいから急激に悪化してくる感じがするので、そこそこマージンがありそうです。

 

そもそも積水ハウスで高いC値を目指すのは無理があるし、気密性を確保するための施工の仕方を考えると、新築時は数字がよくても、10年後、20年後には相当に劣化していると考えるべきかと思っています。一般的かわかりませんが、「C値が倍になるぐらいは覚悟しといた方がよい。」という声もあります。

 

であれば、倍になっても2ということで、ひとまず1を目指せば、そこそこの性能は長期にわたって確保できそう、と考えることにしました。

 

また断熱値は線形でエネルギー消費量にきいてくるので、断熱値に凝るのはコストパフォーマンスは別にして、浪費?エネルギー削減という点では意味があります。しかし、C値についてはグラフが非線形なので、そもそもの漏気の削減効果自体がC値がよくなるにつれて減っていってしまうという特性からも、ほどほど、を目指すのが精神衛生上もよさそうです。

 

ただし、これまでの議論はすべて家を一つの箱として家の中の外にずばっとわけたマクロ的な議論です。次回は、局所的な影響についても考えてみたいと思います。