積水ハウスで、夢をかたちに。

憧れをかたちに、はできなかったけど、3社で迷い積水ハウスになりました。

換気(3):一種換気ですべてがカバーされるわけではなかった

これまで、二つのポストで

  • 全熱交換型一種換気の採用をきめたこと
  • 全熱型熱交換の注意点として時に指摘される臭いが戻る問題は、科学的にみれば問題にならないと納得したこと

を書きました。今回は換気に関するより具体的な話とまとめです。

 


一種換気では集中型が一般的だが個別換気との使い分けが必要

一種換気では、給気量と排気量のバランスを取り、正圧や負圧にならないようにすることが重要です。更に熱交換器を組み込む場合は、給気と排気を同じ熱交換器の中に入れる必要があります。

そのため、個別換気方式よりも集中型の換気方式が多く採用されています。具体的には、給気口と排気口が家全体で一か所、または各階に一か所ずつ集中して設置されるのが一般的です。

積水ハウスが採用する熱交換一種換気は、ダクトレスで排気口と熱交換器のある部屋が空気を吸い上げ、同じ場所の給気口から熱交換した空気をダクトを通じて各部屋に供給する仕組みです。

しかし、一種換気を採用していても、集中換気からはずれる個別換気が必要な場所がでてきます。トイレ、風呂、レンジフード、乾太くんの排気などがその例で、特定の時間に短期間で空気を入れ替えたい場所に該当します。

このような個別換気を組み込まない場合、2つの課題が生じます。

第一に、個別換気の排気量に見合う給気を別途行う必要があります。これに対しては、個別換気と連動して一種換気の給気量を増やす仕組みが考えられます。

第二に、個別換気の吸排気は熱交換器を通らないため、エネルギー効率が悪くなります。個別換気の排気を一種換気の排気ダクトに接続することで改善できますが、多くの一種換気がダクトレスのため、コストがかかる上に、湿った油脂分を含む空気を熱交換器まで運ぶことには問題があります。

このように、一種換気と個別換気を完全に統合するのは現実的ではありません。臭気の給気への回り込みなどの懸念もありますが、いずれにしても個別換気との使い分けが必要不可欠です。

レンジフード

中でも影響が大きいのはレンジフードの換気です。レンジフードの排気量が大きいためです。一般的に、レンジフードは弱運転で150〜200立方メートル、強運転で500立方メートルの排気量があるとされています。 

例えば、延べ床面積が40坪で天井高2.5メートルの住宅を考えた場合、家の中の空気の体積は約330立方メートルとなります。計画換気では1時間あたり0.5回換気することが義務付けられています。これを前提とすると、160立方メートルの換気が必要になり、レンジフードを弱運転でつけただけで、家からの排気量が2倍近くになるイメージです。

 

このため、別途給気する必要があります。給気の方法としては、

①自然給気口を設置する、

②同時給排気機能付きレンジフードを使う、

③第一種換気システムと連動させて給気量を増やす、

の3つが考えられます。

 

①と②は共に、熱交換されていない外気を取り入れる点で同じです。②については、コスト増となり対応機種も少ないという課題があります。採用予定のトクラスのモデルでは、自動給排気機能付きは提供されていませんでした。

③については、パナソニックの一部システムであれば可能なようです。しかし、レンジフード側もAiSEG2に対応していないと使えません。トクラスの場合は残念ながら現状対応していないようです。  

結果として、自然給気口を設置し、レンジフードが作り出す負圧によって外気を取り入れる方法に落ち着きました。

乾太くんを採用する場合も大量の排気をするので、同様の問題が発生します。私たちはオール電化にしたのでは乾太くんを採用しませんでした。

風呂・トイレの排気

第三種換気であれば、風呂やトイレの24時間換気(排気)が家全体の排気口の役割を担っており、各部屋に給気口があるつくりになっていることも多いのではないかと思います。風呂・トイレがしっかりと家全体の換気系統に組み込まれているわけですね。

 

これに対して、全熱交換型一種換気の場合は、湿気・臭気を嫌って風呂・トイレの空気は直接(熱交換器を通さず個別で)排気するつくりが多いようです。

個別排気ということでレンジフードと同じ問題を抱えているわけですが、レンジフードと比べると風量がけた違いに少ないことから、特に給気を気にする必要はないという見解が一般的なようです。私たちを担当してくれている設計士も同じ意見でした。

とはいえ、仮にC値が0の家があれば、吸気口無しに換気扇が回り続けると、屋内の圧力が下がっていき、最後はファンの力では排気できなくなるところまでいくはずです。実施にはC値はもっと高く家には隙間があるわけで、すきまから風を引きずり込むことになります。

このことから、負圧になってしまったときに対応できる自然給気口は必要でしょう。現実にはレンジフード対応で自然給気口を付けるので、この給気口がトイレ・風呂などから発生する負圧問題にも対応してくれる、と納得しました。

熱交換型一種換気の本当の効率

熱交換器の効率は80%~90%とされていますが、これはあくまでも熱交換器を通った空気に関しての話です。実際にどれだけ換気に伴う廃熱を抑えることができるかは、家全体の換気の中で、熱交換器をとおる換気の比率と熱交換器の効率の掛け算になります。

 

熱交換器を通らない換気としては、

  • 家の隙間からの意図せざる自然換気(C値が高くなると顕著)
  • レンジフード、トイレ、風呂などの個別排気

があげられます。これらを含めて考えると、家全体でみた熱交換の本当の効率は5割を大きく下回ることが容易に予想されます。

少しでも効率をあげるために、風呂の換気扇は使わず、風呂の扉を上げた状態でサーキュレーター(扇風機)をつけて風呂を乾かす方法も使われているとか。

ここまでしないといけないのだったら、熱交換器を何十万円もつけてつける意味があるのか?ダクトのメンテナスも考えれば、3種換気のままでいいじゃないか、という意見も、見る立場によっては成り立ちますね。

まとめ、なぜ熱交換型一種換気が気に入ったか

それでも、私は以下の理由から、熱交換型一種換気は追加コストに見合うと判断しました。

  • 家の中が負圧になりにくいので、隙間から空気をひっぱりこみにくい。
  • 廃熱の回収効率がたとえ2-3割でも、大きい。
  • 少なくとも、補助給気口一か所以外のダクト式給気口からは不快ではない温度の空気が供給される
  • 各部屋に給気口を付けなくてよい。デザイン面でも、フィルターの掃除といったメンテナス面でも大きい。
  • 主な給気口には、サイクロンフードを付けられるので、メンテナスが更に簡単。補助給気口一つだけ気にすればよい。

更に望むとすれば、個別排気の運転状況によって、一種換気システムが自動で給気量・排気量が変えられるシステムが実現することでしょうか。

 

一種と三種換気のどちらがC値に敏感か。

 

なお、一種換気と三種換気でどちらの方がC値に敏感か、に関しては議論の余地があるようです。

 

一方の立場は、負圧でないので隙間から風が入りにくい分、一種の方がC値におおらかでいられる、というもの。

 

もう一方の立場は、暖かい空気が一階から二階に動く結果、二階と一階で気圧差が発生する。三種で家全体が負圧だとこの効果があまり問題にならないが、一種だとこの影響が出るので、むしろ三種の方が良い、というもの。

 

ただし、1階と2階の気温差が0.5パスカル程度、これに対して第三種換気における室内と屋外の気圧差は、10パスカル程度のようです。この数字を比較すると、家の中の気圧の差は、三種換気における家の中と外の気圧の差と比較するとずっと影響が小さくなると考えられます。

 

ちなみに、高気圧・低気圧を測るときにつかわれる単位はヘクトパスカル=100パスカルです。

 

典型的な高気圧の中心気圧: 約1030hPa(ヘクトパスカル)

典型的な低気圧の中心気圧: 約990hPa

 

したがって、

 

高気圧と低気圧の典型的な気圧差 = 1030hPa - 990hPa ≒ 40hPa =4000Pa

 

となるので、負圧がかかっているときでも家の内外の気圧差はこの何百分の1程度ということがわかります。