積水ハウスで、夢をかたちに。

憧れをかたちに、はできなかったけど、3社で迷い積水ハウスになりました。

積水ハウスの気密仕様

はじめに

中間気密測定が期待していた水準に全く届かず、残念ながらC値1.3という結果になってしまったことは、前回の記事でご紹介した通りです。

私たちの家の気密性能が見えてきたところで、現時点で積水ハウスの気密性能に関して、私が調べた内容や考えたこと・感じたことをまとめておきます。これは、2024年9月現在の情報です。

現実的な気密性能の水準は?

気密性能は特に鉄骨を商品として持っている大手HMにとっては鬼門です。こうした中で、意欲的な工務店や、一部のハウスメーカーは対大手HMでアピールポイントになることもあってか、積極的に取り組んでいます。

気密性能は、特に鉄骨を商品として持つ大手HMにとっては鬼門です。こうした中で、意欲的な工務店や一部のハウスメーカーは、大手HMに対抗するアピールポイントとして、積極的に取り組んでいます。

例えば、一条工務店は基準値がC値0.7(測定した結果の平均は約0.6)、アイ工務店(2023年9月以降契約分)やヤマト住建は、C値0.5を基準値として全棟気密測定を行っているようです。少し極端な例では、旭化成ホームズの実験的新商品ともいえるAsu-haus(木造)では、C値0.2を目指すという例もあります。

安定して気密性能を出せるのが一条工務店だけであれば、それは一条ルールといわれる設計・仕様面での厳しい縛りがあるからと言えそうですが、アイ工務店でこれができているのは象徴的です。

アイ工務店は、年間5000棟以上を建築している一方で、品質管理が難しいフランチャイズ制をとっています。フランチャイズと大量建築の組み合わせでも、安定して気密性能を提供できるということは、やる気さえあればC値0.5は意外と達成できるということでしょう。

Asu-hausは価格が高い印象もありますが、他の例を見る限り、気密性能を上げるために追加的な材料費やコストを大幅にかける必要はなく、設計・施工が気密を確保するポイントをしっかりと理解し、気密に配慮した工法に基づき丁寧に施工することが重要なようです。

こうして見ると、現代の技術水準であれば、C値0.5〜0.6ぐらいは、やる気があれば実現可能な範囲だと思います。この目線で、積水ハウスの気密性能について考えてみたいと思います。

積水ハウスの気密施工のグレード

積水ハウスは、気密について積極的に語らないHMです。気密に限らず、数値について語らず、スペック競争から距離を置いたハウスメーカーともいえるかもしれません。

このため、情報も非常に少ないのですが、ネット上の情報をまとめると、2024年春時点では、

標準仕様 → 気密施工オプション → スーペリア仕様

の3段階があることはほぼ間違いないようです。

標準仕様

積水ハウスの標準仕様では、室内と断熱材の間に防湿シートが入りません。シートではなく、合板等で気密ラインを形成する工法もあるようですが、特に気密性能を意識した施工は行っていないようです。

ネット上でも「シートが無い」という情報が散見されますが、信じがたく現場監督に確認したところ、やはり無いとのことでした。ここまでくると、積水ハウスの本音は「気密性能、そんなに重要ですか?」と考えているようにすら感じられます。

以前は「積水ハウスの家は寒い」という声もよく耳にしましたが、気密施工オプションの採用率が低いにもかかわらず、最近の施主コメントでは「エアコンをつければ十分に快適」という声が多く見られます。

「エアコンを極力使わず省エネ」とか「スペックが優れた家」という優先順位がない限り、これで十分なのかもしれません。

気密施工オプション

気密施工オプションは、防湿シートを施工する他、気密テープをより広範に貼る、コンセントに気密カバーを付けるといった内容です。また、3・4地域仕様と1・2地域仕様があり、天井の施工方法が異なります。

報告されている施主の方はみな1・2地域仕様気密施工オプションを採用しているようですし、私たちも1・2地域仕様気密施工でした。3・4地域仕様は中途半端なので、実際にはあまり提案されていないのかもしれません。

金額面では、私たちの例をとると、気密施工オプションは坪当たり1万円弱の追加費用でした。

気密施工オプションが目指す数値としては、「C値2.0を切ること」と、「C値1.2程度を目指している」といった例がネット上ではでています。

もう削除されてしまいましたが、かつて存在した次世代省エネ基準区分では、C値の基準は2.0(1・2地域)とされていました。ちなみに3地域以下はC値5.0です。歴史的経緯を踏まえると、公式には「C値2.0を切ること」とするのは十分に考えられます。

ラクダが中間測定の結果に遺憾の意を伝えたところ、現場監督が本社商品開発部門に問い合わせてくれたのですが、「C値1.3で十分に期待した性能がでているじゃないですか。問題ありません。」との回答だったそうです。

スーペリア仕様

スーペリア仕様は相当に価格があがるという声もありますが、2023年末に導入された新しい仕様のこともあり、情報がほとんどありません。これまでに報告されている施工例のほとんども、スーペリア仕様ではないようです。時期的にも今後少しずつ施工例がでてくるのではないかと思います。

また、積水ハウスは気密性能を断熱性能と一体で考えている節があり、スーペリア仕様と一言で言うと、断熱性能と気密性能双方がアップグレードされます。高額と言われていますが、断熱部分が高額で、気密性能だけをスーペリア仕様相当にアップグレードするのであれば、金額はそこまでしないのかもしれません。

ただ、現場監督の上司によれば、スーペリア仕様を踏まえても「積水ハウスにはC値1.0以下を保証するような仕様は無い」とのことです。

保証をしないということと、達成できないということは違いますし、公式には「鉄骨と木造で性能・やれることにほとんど違いが無い。」とアピールする中で、木造だけ良い性能を掲げにくい事情も理解できます。従って、実際には相応の性能が期待できるのかもしれませんが、気密施工の内容を考えると、ここで金額が大幅上乗せになるのは納得感が低い気がします。

気密測定の実例・参考値

シャーウッド

気密が気になる技術志向の施主さんはX(旧Twitter)と相性が良いのか、Xで検索するとちょこちょこ実例が出てきたりします。最近の例では、

といった感じです。数字は中間測定→完成時測定です。

キューブさん(最初の0.2)の方は、現場に細かく指示を出して気密に配慮したプラスαの施工をしてもらっているようで一般性に欠けます。従って、C値0.6ぐらいが上限だと思っていたのですが、最近になって別の方が0.2を出しています。

この方は、施主が気密測定業者から入手した「気密施工時に気を付けるポイント」の資料を現場監督・大工さんが勉強した上で施工をしてくれたようです。他にも、施工地域であまり経験が無いので、経験がある北陸の支店に問い合わせて施工したところ、0.6が実現できた、という例もありました。

これらの情報をまとめると、

  • 積水ハウスのマニュアルをただなぞるだけの施工では、C値1.0を切れなくてもおかしくない。
  • 気密施工オプションの仕様は、ポイントを理解して丁寧に施工すれば0.6程度を出せるだけのポテンシャルはある。
  • 本社はそもそも目指す水準が低く、ノウハウは支店レベル、あるいは施工チームレベルで偏在している可能性が高い。このため、ノウハウや意欲があるチームにあたるかどうかで、結果が大きく左右される。
  • ノウハウは支店レベル・協力工事店レベルで偏在している、
  • 気密施工オプションをつければ、C値1.5はほぼ切れそう。

と言えそうです。

鉄骨

そもそも気密にこだわる人は鉄骨をあまり選ばないこともあり、シャーウッドに較べて更に例が少ないのですが、二つ具体例が出ています。

最初の方は結果にとても不満だったようですが、木造であれば0.5ぐらいに匹敵する数字ではないでしょうか。鉄骨でこの数字は素晴らしいと思います。ご不満だった背景には、FPの家と比較していたころに、営業担当から鉄骨でも木造でも同じ性能が出せるので気密性能についても大丈夫、といった説明を受けていたためのようです。

二人目の方は、積水ハウスの仕様について詳しいYoutuberがかなり細かいところまで関与したと思われる家で、現在積水ハウスの鉄骨で到達できるほぼ限界のように思えます。

現場ガチャ

気密測定した実例を見ると、木造+気密施工オプションであれば、工法としては最初にあげたC値0.5-0.6に近い水準は出るし、現場の習熟度・理解度があがり、やる気があれば更に上も狙えるポテンシャルはあると言えそうです。

しかし、このポテンシャルを活かせるかどうかは現場次第でガチャの要素が強いのが今の積水ハウスだと感じました。

新設されたスーペリア仕様であれば、一層ポテンシャルは高いのかもしれませんが、気密施工は施工にあたる職人の理解力・経験が重要だとすれば、スーペリア仕様にしても同じ職人が施工する限り、ポテンシャルを活かせない気がします。

例えば「スーペリアであれば、C値0.5を保証します。」ということであれば、積水ハウスは絶対に成し遂げてくれる会社ですが「1.0以下を保証できる仕様は無い。」とのことなので、会社としてのコミットメントは期待薄です。

従って、「一定の気密性能を出すことが絶対条件」という施主には積水ハウスは向かないと思います。

それでも積水ハウスで気密にこだわるのなら

対応してもらえるかどうかわかりませんが、もし気密性能が絶対条件であるにもかかわらず、何らかの理由で積水ハウスで建てたい場合、ハードルは高いですが、以下のいずれか、あるいは組み合わせを試みると思います。

  • 施工を担当する協力工事店の気密施工経験と、もしあれば気密測定結果を聞く。これで、ある程度の数値が出ている協力工事店であれば、良い性能が出る可能性があがる。

  • 気密施工のポイントを知っている気密測定業者、あるいは積水ハウスの中で気密施工の経験値が高い支店から資料を入手し、施工を担当する協力工事店に渡した上で、対応できるかどうか確認してもらう。

  • 中間気密測定時、フォグマシーン等を用いて隙間を見つけ塞いでいく対応に協力してもらう。

まとめ

今回は、積水ハウスの気密性能についてのまとめです。次回は、気密に関する考察の最後として、気密性能がどれだけ重要か、改めて考えてみたいと思います。