積水ハウスで、夢をかたちに。

憧れをかたちに、はできなかったけど、3社で迷い積水ハウスになりました。

家のコストに関する考察(3) 積水ハウス

前回は住友林業を例に、大手ハウスメーカーのコスト構造を調べてみました。今回は、積水ハウスを例に、同じような分析をしてみましょう。

積水ハウス

利益率のまとめ

こちらの数字は、請負型ビジネスー戸建住宅事業の数字です。このセグメントには、瀬積水ハウスブランドのイズシリーズ(鉄骨)、シャーウッドに加えて、価格を抑えたセカンドブランドである積水ハウス・ノイエの数字も含まれています。しかし、2022年の建築戸数で見ると6271(鉄骨、イズシリーズ)、2979(シャーウッド)、673(ノイエ)と、ノイエの数字は小さいので、ほぼ積水ハウスの数字とみなして良いでしょう。

 

  2018 2019 2020 2021 2022
売上 357,944 390,995 323,332 352,732  352,463
売上総利益 90,918 99,313 82,773  93,474  88,468
営業利益 42,255 45,942 32,231 42,475 38,309
総利益率 25.4% 25.4% 25.6% 26.5% 25.1%
営業利益率 11.8% 11.8% 10.0% 12.0% 10.9%

 

粗利益率(総利益率)は25%程度、営業利益率も10-12%程度と非常に安定しています。前回の住友林業と比較すると利益率を確保できていることがわかります。

 

販売金額と販売戸数

一方できがかりな点もあります。よく見てみると、売上金額は5年間でほぼ横ばいです。資源価格をはじめとしたコストはじりじりと上昇していくため、利益率を確保するためには価格を上げざるを得ず、販売戸数が同じであれば、売上もあがるはずです。

 

この謎を解く鍵は、販売戸数にあります。以前に別の記事でまとめたように、積水ハウスの受注戸数2018年→2022年で、11,636戸→9,250戸と大きく減っているのです。裏を返せば、売上高が同じ一方で、2割強も戸数が減っているので、一戸当たりの価格が2割強上昇していることになります。

 

積水ハウスは、戸数や市場シェアを追わず、収益性の高い案件に焦点をあて、価格決定権を維持することで利益率を確保する戦略をとっている、といえるでしょう。働き方改革が建設業にも及ぶことからくる人手不足、いわゆる2024年問題が控えていることを考えると、量を追わず質に焦点を当てるアプローチは、ハイエンドHMとしては合理的であるように思えます。

広告費の影響

宅建設業界広告宣伝費ランキング2023によれば、積水ハウスの広告宣伝費は約230億円で、売上に対する広告宣伝費率は0.8%でした。販売管理費率は、総利益率と営業利益率の差なので、13%-14%になります。このうち、0.8%が広告宣伝費ということになります。

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0.8%といえば4500万円の家を購入する場合、34万円が広告費相当分ということになります。34万円が無かったとしても、4468万円。広告があることで顧客が集まりスケールメリットが得られるなどのプラス面も考えると、「広告宣伝費があるから工務店に比べて不利」といえるほどの差は無いように感じます。

まとめ

約25%という粗利益率が「適正」なのかどうか、比較対象が無いと評価ができません。こちらについては、大手ハウスメーカー以外の情報を整理してから、改めて評価することにしましょう。

 

住宅価格を原価、販売管理費、利益に分解してみる

積水ハウス住友林業と大手ハウスメーカー2社をみると、粗利益率は20-25%、営業利益率は4%から12%程度ということがわかりました。

 

2022年の両社の戸数、平均価格どはこちらです。

  戸数 平均価格 平均坪数 坪単価
積水ハウス 9250 4620 41.6 111.1
住友林業 8300 4150 37.2 111.6

 

これに以下の利益率の数字を当てはめてみます。

 

  粗利益率 営業利益率
積水ハウス 25.1% 10.9%
住友林業 19.1% 3.0%

 

すると、一戸当たり価格ベースでは、

(万円)  平均価格   原価   販売管理費   営業利益 
 積水ハウス  4,620 3,460 656 504
 住友林業  4,150 3,357 668 125

 

住友林業は家を一軒売っても125万円ほどしか儲からなかった、2022年はウッドショックなどもあり収益性が特に低い年だったことが浮き彫りになります。

面積の違いの影響を除くために坪単価ベースでみると、

(万円) 坪単価 原価 販売管理費 営業利益
積水ハウス 111.1  83.2 15.8 12.1
住友林業 111.6  90.3 18.0 3.3

 

となります。これからは、仮に販売管理費、営業利益を全部削って原価で家を建ててくれたとしても、坪当たり83万円~90万円になります。これは、ローコストハウスメーカーや、工務店のすべて込みの坪単価と比較しても、依然として高そうです。

このことから、「少なくともモデルハウスや、広告費が高い、あるいはが儲けすぎだから、ハウスメーカーで建てるのは損」という説明は事実ではないか、少なくとも全体像を表していない、ということになります。

今後の記事で、中堅・ローコストメーカーの経営数字、および工務店の状況などについても調べた上で、改めて考察します。

おまけ

積水ハウス住友林業ほどしっかりと開示されていませんが、ヘーベルハウス(浅井化成ホームズ)、プライムテクノロジーズ(ミサワホームトヨタホームパナソニックホームズ)、セキスイハイム積水化学工業住宅部門)についても営業利益率は調べることができました。1.5%~9%の数字でした。

ざっくりと言って営業利益5%程度がベースラインで、ブランド力が強く、合理化の進んでいそうな積水ハウスヘーベルハウスはアウトパフォームといった印象でした。ここで「合理化が進んでいる」とは、工場生産や部材の社内生産の比率が高く、コストをコントロールしやすい会社といった意味合いです。

経営数値を見る限り、ハイ・エンドハウスメーカーの注文住宅というビジネスモデルはよくて成熟、悪ければじり貧な感じがします。

こうした中、リフォームや賃貸の管理業務などのストック型ビジネス、海外ビジネス、ディベロッパービジネスへの多角化がうまくいっている会社は先見の明がありますね。施主になる身としては、多角化を経て注文住宅事業の重要性が低下しても、アフターサポートなどのサービスの質が維持されて欲しいと思うので、親和性の高そうなリフォームビジネスに積極的 い取り組んでいる会社には好感度アップです。