はじめに
以前に、設備等の割引率についてまとめました。
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今回は、割引率に大きな影響を与える特注仕様について整理したいと思います。
特注という言葉が出てくると、とても高くなるような印象を持つかもしれません。これは半分本当ですが、必ずしもそうではない場合もあります。特注には2種類の特注があるので、私たちの経験を踏まえ、この点もまとめたいと思います。
ハウスメーカーの標準またはオプション仕様で十分と言う方、こだわりがあって特注仕様が多くなる可能性のある方で、ハウスメーカー選びも変わってくるのではないか?と言うお話です。
特注とは
特注とは、以前にこちらの記事で説明した、ハウスメーカー(HM)の標準仕様やオプション・提案の枠組みから外れる仕様のことです。
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標準やオプション仕様に関しては、ハウスメーカーの品番が振られており、効率的に事務処理できたり、事前に交渉して合意した価格・割引率が適用されたりするなどのメリットがあります。また、ハウスメーカーは施工にも慣れていることが期待できます。
これに対して特注の場合は、アイテムごとに見積もりを取って価格を決めていく方式が一般的です。
二種類の特注
特注には、二つのパターンがあります。
HMの特注扱いとなる一般流通品
一つ目のパターンは、設備メーカーのカタログに載っている、いわゆる一般流通品ですが、ハウスメーカーが自社の標準やオプションの対象外として扱っている仕様を施主が採用するケースです。
メーカーが対象外
例えば、キッチンに関して、LIXILとパナソニックのみを標準・オプション仕様としているハウスメーカーで、タカラスタンダードのカタログに載っているキッチンを入れたい、といった例が一番わかりやすいです。
モデルが対象外
TOTOネオレストNX(最上位機種)を導入したいという場合、ほぼ全てのハウスメーカーで特注扱いになるのではないでしょうか?ハウスメーカーの多くがTOTOのトイレを標準やオプションで取り扱っている一方で、注文数の少ない超高額トイレのNXはハウスメーカーのカタログに含まれていないことがほとんど。この場合、TOTOとの取引があったとしても、NXの採用は特注扱いになります。
仕様の一部が対象外
同一モデルであっても、ハウスメーカーで限定している仕様(機能、面材、色など)から外れた仕様を希望する場合です。例えば、キッチンや洗面台について、多くの部分でハウスメーカーの標準またはオプション仕様を採用する一方で、面材などの特定部分で標準・オプション仕様に含まれないものを選ぶケースがこれに該当します。
この場合、標準・オプションから外れた仕様の部分だけが特注扱いになるケースもありますが、その他の部分も含めて設備一式(例えばキッチン全体)が特注扱いになることもあるようです。
私たちの例では、トイレのリモコン色をシルバーから黒に変えようとしたところ、トイレ全体が特注扱いになるとの説明を受けました。
一般流通品にもない特注仕様
二つ目のパターンは、設備メーカーの一般流通品でも用意のない、本当の意味での特注仕様です。
- キッチンで、通常仕様では付けない位置にコンセントを付ける
- 通常は2枚を繋ぐ必要がある長さのカウンターを1枚で仕上げてもらう
- デザイン上の必要から、ロールスクリーンのメカニズムの巻径を一回り大きいものに変えてもらう
- 周囲と意匠を合わせるために、塗装してもらう
- 配線や配置の都合で、製品に穴や切込みを入れてもらう
など。
当初、私たちはこういうタイプの特注が発生するとは想像していませんでした。 しかしながら、インテリアを詰めていく際、細部にこだわりだすと、既製品のままでは少し残念なところが出てきたりします。
インテリアコーディネーターさんが豊富な経験から提案してくれた、私たちには思いもつかない対応案は、問題を解決してくれる一方で、設備メーカーにとっても特注扱いになるものが多くありました。
価格・割引率にどう影響するか
HMの特注扱いとなる一般流通品の場合
多くの人にとって、一番痛みを感じるのがこのケースだと思います。特に、事前に設備メーカーのショールームやカタログで研究し、定価や仕様のグレードを把握した上で、理想の構成をイメージしていると、とてもがっかりすることがままあります。
設備メーカーの定価が同じだったり、ほぼ変わらないものを入れようとしても、HMの標準・オプション仕様から外れると、大幅に見積金額が上がってしまう場合があります。時には一部を変更するだけで、変更していない他の部分の価格も上がってしまうなど、施主の観点からすれば納得しにくい状況も起こり得ます。
さらに、標準・オプションの縛りがきついハウスメーカーほど、標準・オプション仕様に含まれるものについては、安価(HMにとっては有利な仕入れ値)になっていると考えられます。逆にいえば、特注仕様を採用した場合、標準・オプション仕様の割引率との差が大きくなりやすく、ひいては見積金額に大きな影響を与えることになりがちです。
自由度が低いからこそ特注でないと対応できないこだわりポイントが多くなるのに、特注仕様ごとの増額幅が大きいと、ストレスが溜まります。金額が増えるのもつらいですが、もやもや感が積み重なって満足度が下がるのがボディーブローのように効いてきます。
一方で、
- もともとの単価が低いもの
- 標準・オプション仕様の割引率が低いもの
- 設備・素材メーカーの量産品グレードのもの
に関しては、特注に置き換えても差額がさほど大きくならずに済む可能性があります。例えば、壁紙は、貼る面積や選ぶ壁紙の単価にもよりますが、部屋の印象に与える影響が大きい一方で、比較的小さな増額幅で収まります。また、量産品グレードの壁紙を採用する場合は、安価なHMオリジナル壁紙とさほどコストが変わらないという話も聞きました。
我が家の場合、ユニットバスについては、積水ハウスで標準仕様になっている積水ホームテクノと、標準ではないパナソニックのオフローラを比べたところ、オフローラの方が安かったこともあります。積水ハウスの場合は、設備メーカーとの交渉に強い上、私たちの地域では設備メーカー間の競争が非常に激しいため、割引率が大きい(営業担当談)という事情があるのかもしれません。
ちなみに、積水ホームテクノは積水化学工業グループです。ネットでは積水ハウスのグループ企業と書かれていることもあり、私たちも最初はそう思っていたのですが、セキスイハイムの関連会社ですね。
一般流通品にもない特注仕様の場合
一般流通品でない特注の場合は、そもそも定価という概念がありません。対応ができるかどうかを確認したうえで、設備メーカーの言い値でお願いすることになるでしょう。そのため、価格は交渉次第のところがあります。
私たちの場合、インテリアコーディネーターさんが設備メーカーと交渉をしてくれた結果、価格の上乗せ無しで対応してもらえたものもあれば、手間賃も含めいいお値段が追加されたものもあります。
一番びっくりしたのはキッチンのアイランドにコンセントを付ける依頼をしたときのこと。選択したシンク、食洗機の関係もあり、それらと干渉しないよう通常仕様では付けない位置に設置をお願いしたため、その特注仕様が約30万円という見積もりでした。コンセントを付けるだけで30万円・・・
造作家具も特注の一つと言えるかもしれません。システム収納などイージーオーダー的なものをカスタマイズして使えればそこそこの金額に収まりますが、一からデザインしたり、家具材から用意したり・・・といった造作の場合には、相当な金額になります。大工さんが現場で行う大工工事でなく、家具職人が行う家具工事となると更にお値段があがるとのこと。
造作家具もそうですが、大量生産の枠組みから外れる造作はコストパフォーマンスの観点からはできるだけ避ける努力をした上で、それでも必要なところは設計士やインテリアコーディネーターさんと相談しながらうまい方法を探っていくしかなさそうです。
ハウスメーカー比較
私たちはキッチンに対して非常に強い思い入れがありました。そのため、ハウスメーカーを決定する前にキッチンメーカーのショールームを訪問したり、カタログを研究したりして、理想のキッチンのイメージを固めました。
ハウスメーカー選択にあたっても、メーカーだけでなく仕様も含めて希望するキッチンを入れられることが絶対条件でした。このため、請負契約を結ぶ前に、キッチンの仕様を決め、見積もりを取ってもらいましたが、希望する仕様の一部は特注扱いになりました。
私たちが比較検討した三社(住友林業、三井ホーム、積水ハウス)の中では、一般流通品を特注扱いで採用する場合、もやもや感が相対的に少なかったのは積水ハウスでした。他の二社の場合は、設備を特注に変更しようとすると、まず「できる・できない」の検討に時間がかかり、できたとしても特注仕様の見積もり金額が設備メーカーの定価を超える場合がありました。ハウスメーカー側もこうしたリクエストにあまり慣れていないのかもしれません。
これに対して積水ハウスは、特注と標準・オプション(HMカタログ掲載品)との間の敷居が低い感じがします。スムーズに見積りが出てくるだけでなく、差額も想像の範囲に収まることが大半でした。営業担当や施工地域による部分もあるのでしょうが、積水ハウスは多様なニーズへの対応に慣れており、設備メーカーとの交渉力も強いという印象を受けました。
標準仕様・オプション仕様の範囲の中で選ぶとすれば、標準仕様という枠組みがしっかりしている住友林業、三井ホームの方が設備の価格競争力が高い可能性があります。一方、設備へのこだわりが強く標準仕様の枠組みからはみ出す部分が大きい方には、積水ハウスがお勧めかなと思います。
まとめ
振り返ってみると大した話ではないのですが、私たちは特注が何を意味するのか、どういう仕組みになっているのか、ぼんやりとした理解のまま仕様の検討をしていました。このため、ハウスメーカーとの会話や、夫婦間の相談でも認識が食い違ったことがしばしばあります。
今回は特注という概念を言語化することで、これから家づくりをされる方に少しでもお役に立てればと思っています。また、請負契約前の検討項目として、特注がどれぐらい発生しそうか、そしてできれば特注仕様の見積もりを検討したうえで、ハウスメーカー選びをすることを強くお勧めしたいと思います。