はじめに
シャーウッドの基礎には、以下の特長があります。
- 高スペックの布基礎
- 土台を使わず基礎と柱をダイレクトジョイント
- 基礎一体打ち工法
- 基礎高耐久化シート工法
- デザイン基礎
一般的に、木造建築にはベタ基礎が向いていると言われていますが、布基礎の性能について特に気になるところだったので、以前の記事で3回にわたってまとめました。
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今回は、シャーウッドの基礎の特徴についてまとめました。
基礎の基本スペック
仕様規定で定められている水準と比較すると、積水ハウスの仕様は大幅に強化されています。
建築基準法 | 積水ハウス | 建築基準法との差 | ||
---|---|---|---|---|
立ち上がり幅 | 120mm以上 | 160mm | +40mm | |
立ち上がり高さ | 540mm以上 | 760mm | +220mm | |
フーチング高さ | 150mm以上 | 180mm | +30mm | |
主筋径 | 13mm以上 | 19mm | +6mm | |
配筋ピッチ | 300mm以下 | (200mm) | -100mm | |
防湿 コンクリート | 防湿シートのみ | (50mm) +防湿シート |
+50mm |
立ち上がり幅、立ち上がり高さは、建物で言えば梁の太さに相当する部分です。これに対して、主筋径の太さ、ピッチの狭さは、梁の単位断面積当たりの強度を左右します。
改めて数字をみると、積水ハウスの標準仕様は、太さも強度も相当に強化されています。これにより、梁がたわまず線上に均一に力を掛けられるほか、地震の際に発生する水平方向への力に耐える力も大幅に増していることが期待できます。
ただし、シャーウッドの基礎の仕様で、仕様規定を満たしていない点が一つあります。仕様規定では、フーチング(基礎のベースの部分)の中に横に配筋することが必要です。しかし上の図にあるように、積水ハウスの基礎ではこの鉄筋が入っていません。そのかわり、本来T字型のベースの部分を、盛り上がった形にすることで強度を確保しているようです。これが可能になるのは、型式適合認定という枠組みを使っているためです。
ダイレクトジョイント方式
積水ハウスの基礎・躯体の売りの一つが、土台を使わずに基礎と柱を直結するダイレクト・ジョイント工法です。
基礎の上に土台を置き、柱を土台に載せるのが通常のやり方。歴史的には、柱と土台はほぞ穴で接合するだけでしたが、阪神大震災の際に接合の弱さが倒壊の原因の一つになりました。そこで、金具で補強するように建築基準法が改正されたものの、土台が先に割けたり、金具の向きにより接合部が弱くなったりと、強度に限界があるようです。
これに対して、土台をなくし、コンクリート基礎に埋め込んだ金具(アンカー)に柱を直接載せるのがダイレクトジョイント方式。接合部の弱さを克服できます。
土台を無くすためには、コンクリートで水平面を精密に施工したり、アンカーを正確に位置決めしたりする技術が必要です。工法と協力工事店の水準に自信があるハウスメーカーしか採用できないのかもしれません。
施工現場を見たところ、建物の耐久壁と基礎をつなぐアンカーボルトの位置をミリ単位で施工できるように、アンカープレート(=メタルフォーム定規)を用いて位置・高さを固定していました。
真っ先にシロアリに狙われる(木の)土台が無いことで、シロアリ耐性も高いことが期待できます。もっとも、柱や構造用合板が食われてしまえば困るわけで、防蟻処理をしっかりと行う必要があります。
基礎に近いところに設置する木には、「謀議処理済」と記載されています。
積水ハウスはダイレクトジョイント方式を大々的に打ち出していますが、ネット上にある工事現場を撮影した写真を見ると、住友林業のビッグフレーム工法もダイレクトジョイント方式でした。ハウスメーカーを検討していたときには知りませんでしたが、知っていたら住友林業に対する評価が更に上がっていたかもしれません。
基礎一体打ち工法
「フーチング部」と「立ち上がり部」が一体化した基礎一体打ち工法は、コンクリートに繋ぎ目がなく、強固な基礎を形成します。この工法は「コンクリート一体打ち」とも呼ばれます。
ただし、この工法ではT字を逆さにした凸型の基礎に一度にコンクリートを流し込むため、型枠の隅々までコンクリートを行き渡らせるのが難しいという問題があります。これには高度な施工技術が必要で、コンクリートの流動性を高めるために水の量を増やすと強度が低下するため、慎重なバランスが求められます。
通常の施工方法としては、平坦な部分を先に打ち、養生も済み、ある程度コンクリートが固まったところで立ち上がり部分を施工する「二度打ち」が一般的です。しかし、二度打ちした基礎では、鉄筋はつながっていますが、コンクリート自体はしっかりとつながっていません。
積水ハウスは、高い技術力を活かし、一体打ちでつなぎ目のない強固な基礎を実現しています。
基礎高耐久化シート工法
基礎高耐久化シート工法は、積水ハウスが2015年から採用する住宅基礎の耐久性を高める工法です。専用の施工治具でポリオレフィンを基材とする粘着剤付き養生シートを建物床下側基礎コンクリートの表面に貼り付け、長期間にわたり基礎を被覆する工法です。
基礎表面をシートで覆うことで、コンクリートの劣化要因である二酸化炭素の侵入を防ぐとともに、コンクリート中の水分を閉じ込めることで、乾燥収縮によるひび割れの低減、長期間にわたる強度の維持を実現することができます。
外側にはアクリル樹脂系の弾性塗料を塗布します。
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デザイン基礎
積水ハウスの基礎は、表面に波打つような独特の凹凸が施されています。このデザインは、見た目に品があり、一度覚えると誰でも積水ハウスの家だと認識できる特徴です。
基礎の色は、通常のコンクリートよりもやや濃いグレーで、外観に統一感を持たせています。基礎の表面は、特殊なシリコン型を使用して形成され、塗装は専用の塗装材を用いて手作業で行われます。
このデザイン基礎は、単に美観を追求するだけでなく、耐久性も兼ね備えています。コンクリートの乾燥収縮によるひび割れを抑制し、基礎の寿命を延ばす効果があります。
基礎の施工は、まず特殊な型を使用して波打つデザインを形成し、その後、ビニールで覆って保護します。基礎が固まった後、ビニールを取り除き、専用の刷毛で塗装を行います。このプロセスにより、高品質な仕上がりが実現されます。
精度を高める工夫
高精度な鋼製型枠の使用
積水ハウスは1975年より、繰り返し使用できる鋼製の型枠「メタルフォーム」を採用しています。この鋼製型枠は、木製型枠に比べて高い精度を維持でき、均一な仕上がりを実現します。
アンカーボルトの高精度設置
アンカープレートを使用してアンカーボルトを設置することで、施工誤差をミリ単位に抑えています。これがあるからこそ、ダイレクトジョイント工法の採用が可能になります。
高精度な鉄筋工法
工場であらかじめ網目状に溶接加工した鉄筋を使用しています。これにより、現場での鉄筋組み立ての精度が向上し、より強固な基礎構造を実現しています。
まとめ
積水ハウスは、基礎の性能には相当のこだわりがあるハウスメーカーだと思います。
一つ一つの技術だけをみれば、必ずしも積水ハウスの専売特許でなく、他のハウスメーカーでも採用しているものも多くあります。一方で、これだけ多くの工夫をすべて取り入れているハウスメーカーは、ほとんどないのでは無いでしょうか。
基礎に求められるのは、強度・制度・耐久性の3つだと思います。
構造計算をして耐震等級3を標準にするハウスメーカーであれば、理論上の強度について高い水準をクリアできていることが期待できます。
しかしながら、理論上の強度を実現し、長く維持していくためには、施工品質と耐久性への目配りも必要です。
ただ、施工品質や耐久性に関しては分かりやすいベンチマークや等級などが存在せず、耐震性・断熱性などと比較すると、消費者にアピールしにくい項目です。それでも力を入れるかどうかは、ハウスメーカー各社の姿勢が問われるところですが、積水ハウスは手を抜いていないなという印象で心強いです。