積水ハウスで、夢をかたちに。

憧れをかたちに、はできなかったけど、3社で迷い積水ハウスになりました。

徹底解説:布基礎とベタ基礎(3):ベタ基礎の留意点とまとめ

はじめに

今回は、布基礎とベタ基礎比較シリーズ3回目、最終回です。

building-dream-home.hatenablog.com

building-dream-home.hatenablog.com


これまでの比較から、ベタ基礎の方が工法としては高い性能を出し得る(=弱い地盤でも使える)ということが分かりました。一方で、「ベタ基礎は布基礎以上にちゃんと作らないと落とし穴もあるよ」というお話です。

ベタ基礎の留意点

ベタ基礎の強度を保つのは簡単ではない

ベタ基礎は面で地盤を押すわけですが、建物からの重みは柱から基礎の上面に伝えられます。

建物の底面全体を覆う鉄筋コンクリートの平板部分をスラブと言いますが、スラブの剛性が高ければ(非常に硬ければ)、上からの力を受け止めてスラブ全体で地盤に均等に圧をかけることができます。

その一方で、スラブの剛性が低くたわむようであれば、どの柱からも遠い場所(広い空間の真ん中など)の下には十分に力が伝わらないことになります。

下は住友林業のHPからお借りしたイメージ図ですが、基礎の立ち上がり部分と、部屋の中で違いがあることがわかります。

住友林業のHPからお借りしました。

厚みがあればあるほど、たわむ力に対する耐性が強くなります。世界で最も高い建築物として知られるドバイのブルジュ・ハリファの基礎にも「ラフト」と呼ばれる基礎スラブが使われていますが、厚さは3.7mもあります。

もちろん、一般の住宅でここまでの厚みは必要ありませんが、面を覆うスラブを厚くするにはコンクリートと鉄筋を大量に必要とするなど、コストがかかります。

そこで、面全体を厚くする代わりに、厚みのある家の外周などの立ち上がりの部分を基礎梁として利用することで、基礎の強度を高めることになります。

鉄筋コンクリート構造物は、以下の図にあるように、基礎梁(立ち上がり)と柱を設けてスラブを施工し、それを積みかさねていきますが、一般住宅のベタ基礎もこれと同じ構造と言えます。

(一社)日本住宅基礎鉄筋工業会からお借りしました。

取れるスパン(基礎梁と基礎梁の距離)は、スラブの強度に依存しますが、仕様規定の基準をぎりぎり守っているスラブでは、外周だけの基礎梁では強度が不十分であるケースが散見されることが、多くの建築士から指摘されています。

家の内部にも立ち上がりはありますが、梁は連続していないと意味がありません。ここで問題になるのが基礎で点検用の人が通る切りかけ「人通口」です。これを設けることで立ち上がりを途中で切ってしまうことになります。

こうした問題に対処するためには、地中梁といわれる構造(部分的に地下を深く掘ってコンクリートの厚みを増す)を入れたり、スラブの強度を高めたりする必要があります。

これに対してベタ基礎では、立ち上がり部分のみに荷重がかかります。そのため、立ち上がり部分の高さをしっかりと取っておけば、曲がる力に対する強度を高められるという点で、ベタ基礎よりもコストパフォーマンス良く基礎の強度を高められるというメリットがあります。

ベタ基礎は鉄筋とコンクリートを多く使う

ベタ基礎の良く知られている弱点として、広い面積を相応の厚さの基礎で覆う必要があるため、鉄筋およびコンクリートの量が増えコストが増加するという点です。スラブの強度を高めようとすると、面全体に影響するため、更にコストが上がることになります。

ハウスメーカーの違いがあるので一概には言えないかもしれませんが、我が家が比較検討したなかでは、布基礎を採用する積水ハウスと、ベタ基礎を採用する住友林業三井ホームでは、基礎部分の価格に大きな差がありました。ただし、三井ホームは、配筋の密度を高めるなど、単にベタ基礎を採用するだけではなく高スペックの基礎を標準にしていることも、基礎部分の価格が高い要因です。

逆に、ベタ基礎でも安いケースは、鉄筋やコンクリートを減らして強度を犠牲にしている可能性を疑ったほうが良さそうです。

どうすれば良い基礎になる?

基礎の選択

結局のところ、ベタ基礎と布基礎といった方式の違いよりも、それらの方式を適切に使えるかが大事なのだと思います。

地盤が良好で十分な地耐力が取れる場合は、布基礎で十分。ただし、基礎の強度を高める必要があります。この点で、建築基準法が定める最低水準より、基礎の立ち上がりやかぶり幅(コンクリートの厚さ)をどのぐらい大きく取っているかが一つの目安になるでしょう。

地盤がやや弱く、地耐力が小さい場合では、布基礎では基準に満たなくても、ベタ基礎にすれば安全に家を建てることができることがあります。これが、ベタ基礎が優位性を発揮する一番わかりやすいパターンです。

敷地全体の地盤が更に弱い場合、地盤強化を行う必要がでてきます。ベタ基礎では表層改良工法が多く使われるのに対して、布基礎の場合は、柱状改良工法が使われることが多いなど、アプローチに違いはありますが、適切な計算に基づき改良後の地耐力と荷重のバランスを取ることに違いはありません。

こうしてみると、基礎自体の強度も含め、構造計算などの科学的な方法に基づく設計を行うことこそが肝であり、これができていればどちらの基礎でも問題ない、と言えそうです。

逆に言えば、計算を行わず、経験と勘に基づいて基礎を設計しながら、「うちはベタ基礎だから大丈夫」というアプローチが一番怖い、ということでもあります。

構造計算や強度確保の工夫の重要性

ベタ基礎を利用する場合は、基礎自体が構造物だという意識をもって強度を確保する必要があります。

三井ホームは、スラブにいれる鉄骨の量を大幅に増やすなど剛性を高める工夫をしています。

三井ホームのHPからお借りしました。

住友林業も、建物・基礎共に独自に開発した構造計算システムを用いて一邸ごとに最適な構造を設計しています。

布基礎ですが、積水ハウスも構造計算によって基礎を設計しています。私たちの家の基礎伏図(基礎の配置などを記した基礎の設計図)も、構造計算を経て修正がされていました。

つまるところ、地盤に合わせて基礎を選択すること、構造計算を行った上で、必要な強度が取れるように設計することが重要なのだと思います。

202544月からは4号特例が大幅に縮小され、二階建て住宅は構造計算が求められるようになります。

大手ハウスメーカーは既にこれを見越した体制整備や、仕様変更を行っているのでさほどの影響は無さそうです。しかし、それ以外の現場では従来通りの仕様でベタ基礎をつくることができず、価格が跳ね上がったり、ベタ基礎の採用が見送られたり、といったベタ基礎ブームへの揺り戻しがくるのかもしれません。

シロアリ対策・防湿効果について

ベタ基礎が優れた点として、厚いスラブで地面を覆うためシロアリが入りにくいし、防湿効果が高いという指摘があります。

ただシロアリに関しては、ベタ基礎だったら防蟻処理がいらない、といえるほどの信頼感は無いようです。防蟻処理を10年ごとに行うことを前提にすれば、この点でのベタ基礎のメリットはあまり考えなくて良いと思いました。

防湿効果については少し気になるところですが、積水ハウスの設計が、基礎の通風など別の手法で適切に対処してくれていることを期待しています。

まとめ

「シャーウッドは布基礎を採用しているけれど、ベタ基礎より劣っているのではないだろうか?」という疑問に答えるべく調べた結果をまとめました。

結論としては、構造計算に基づいた設計をすることがより重要で、それができていればベタ基礎・布基礎の違いは重要ではない、という考えに落ち着きました。

ただし、「ベタ基礎を採用しているハウスメーカーだったら地盤改良がいらなかったのに、積水ハウスでは地盤改良が必要と言われた」というケースはあり得るでしょう。私たちの場合は、地盤が固すぎるぐらいに強固な敷地だったことも幸いでした。

改めて調べてみたのですが、私たちが検討した三社(積水ハウス住友林業三井ホーム)は、それぞれとてもしっかりとした基礎を採用しているなと感じました。

基礎の設計は、技術的に詰めていける分野です。日本建築学会の「建築基礎構造設計指針」など、最低限の法制に留まらず様々なガイドラインや技術資料が出ています。研究・開発部門の充実している大手ハウスメーカーは、こうした技術の進歩を適切にキャッチアップして、仕様をアップデートしていくのではないかと思います。