はじめに
これまで、ホームインスペクションとは何か、そして私たちが施工では定評のある積水ハウスで家を建てるにも関わらず、敢えてホームインスペクションをいれることに決めた理由をご説明しました。
building-dream-home.hatenablog.com
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ホームインスペクションを入れようと思った場合、誰にお願いするかが非常に重要になります。本記事では、私たちがどのようにしてホームインスペクターを選び、検査がどのように進んでいるのかについて詳しく説明します。
インスペクター選定
いくつかの条件をもとに絞り込み、最後にオンラインで面談をして、サービス内容などを確認してから依頼することを決めました。重視した項目は3つあります。
大手か独立系か
最初に考えたのは、インスペクターを多数抱える大手と、少人数でやっている独立系のどちらにお願いするかです。
住宅建設では組織力を評価して大手ハウスメーカーを選びましたが、インスペクションではインスペクター個人の施工・監理およびインスペクション経験を重視しました。
大手であればマニュアルや教育もしっかりしており、基準も確立されているだろうという安心感はありますが、どの担当者に当たるかによって経験値は未知数です。マニュアルをなぞるだけの検査だと、ハウスメーカーが用意した第三者機関による検査とあまり違いがなくなってしまう可能性もあります。
そこで、実際に担当してくれるインスペクターの顔が見える小規模な組織を候補にしました。
経験に裏打ちされたバランス感覚を重視
ハウスメーカーとの関係を考える上でも、インスペクションを意味あるものにする上でも、インスペクションが粗探しや、現実を無視した要求にならないようにバランス感覚を重視しました。
「バランス感覚は現実を経験することによって培われる」と考え、
- インスペクターに施工側の業務経験がある
- 多数のインスペクションをこなしており、現実的な水準を理解している
- 積水ハウスの工法や体制に詳しい
といった点を重視しました。その上で、インスペクターとの契約前の事前打ち合わせで、検査方針や過去の検査事例を説明してもらい、検査で目指すゴールが厳しすぎず、緩すぎず、バランスの取れたラインにあることを確認しました。
不具合を是正するための工夫
検査の直接の目的は「不具合を発見すること」ですが、発見した不具合を是正することができなければ検査の価値が半減します。
インスペクターが不具合と指摘したことが、ハウスメーカー側の認識では不具合ではない、といったケースも考えられます。
こうしたケースにどう対処していくのか、また過去のケースでは実際に是正措置を取ってもらえているかどうかもヒアリングで確認しました。
ホームインスペクションの流れ
インスペクション内容を決める
まずインスペクション会社に連絡し、検査の内容や費用について相談します。
例えば、配筋検査のみ、断熱検査のみ、といった具合に特定の検査だけを依頼することもできますが、多くの場合は複数の検査をまとめたパッケージが用意されており、そのなから選びます。なお、工法が違えば検査の内容や回数も変わります。したがって、施工するハウスメーカーごとに最適な検査の内容は微妙に異なると思います。
ハウスメーカーに連絡し、調整する
インスペクターを入れることを重視する場合には、できるだけ早い段階でその希望をハウスメーカーに伝えた方がよいと思います。
私たちは、請負契約を締結する前にハウスメーカーの了解を得たうえで、着工合意の約2か月前に検査内容などの調整を始めました。
私たちが依頼したインスペクターは、事前にハウスメーカーから合意書を取り付けますが、これは必ずしも一般的なアプローチではないかもしれません。この合意書については、後ほど触れたいと思います。
検査のスケジュール調整
インスペクターと建設会社の間でスケジュールを調整します。これもインスペクターによると思うのですが、私たちの場合は、ハウスメーカーとインスペクターが直接連絡を取り合ってスケジュールを決定しました。
施主にはスケジュールが開示されますし、立ち会いたければ立ち会えますが、施主のスケジュールは考慮されません。
検査当日の流れ
検査当日は、インスペクターが現場に赴き、各種検査を実施します。ハウスメーカー側からは現場監督が参加するのが一般的なようです。
検査結果の報告とその対応
検査が終了すると、インスペクターは報告書を作成し、施主に提出します。報告書には、検査結果や是正が必要な箇所が記載されています。
是正が必要な項目については、その場でハウスメーカーと合意し、是正完了後に写真等で完了を確認した上で、次の工程に進む手順です。
合意書について
先に触れた通り、私たちのインスペクターはハウスメーカーに合意書を要求します。これは非常に合理的なアプローチで、私たちがこのインスペクターを選んだ決め手のひとつなのですが、この合意書をハウスメーカーからもらうのに少し苦労しました。
合意書の内容
合意書は以下のような内容からなります。
- 施工品質・基準に関する質問:たとえば、ある工程で当該ハウスメーカーが何㎜までの誤差を許容範囲としているかなど。
- 検査に有効性を持たせるためにハウスメーカーが負う義務、例えば
- 資料を事前に提出する
- 合意した基準に達していない結果が出た場合には是正する
- 是正完了が確認されるまで、次の工程には進まない
苦労した点
合意書の質問に対する回答部分には、インスペクターが求める基準があらかじめ記載されているものもありますが、ハウスメーカーの社内基準がそれよりも緩い場合、ハウスメーカーの基準で上書きすることも可能です。
そのため、決して理不尽な要求ではありませんが、「不具合があったら本気で工事を止めるぞ」というメッセージがダイレクトに伝わるような文言になっています。
ハウスメーカーからすれば、インスペクターをどこまで信用できるか、いちゃもんをつけられるのではないかと疑心暗鬼になる部分があっても不思議ではありません。
私たちの場合、積水ハウス側の事情により営業・設計担当支店と、施工担当支店が異なることも、ややこしくなった要因と感じました。同じ支店の中であれば支店長の裁量でなんとかなったのかもしれませんが、施工担当支店と本社の間で、個々の質問に対する回答などのすり合わせが必要になったようです。
結果として、2ページほどの質問書への回答が完了するのに2か月弱かかりました。このため、営業担当のIさんにはとても気苦労をおかけしてしまい、申し訳なく感じています。
ただ、合意書を結ぶ過程なかで、対応できるもの、対応できないものなどしっかりと回答をいただけたこと、また、合意した基準に沿わない事態が生じた場合には是正するお約束をいただけたことで、積水ハウスに対する信頼感と施工体制に対する安心感が増しました。やってよかったと思います。
インスペクターによれば、「合意書を結べない」とか「このインスペクターを入れるなら契約しない」というハウスメーカーもあり、そうした場合にはインスペクションを引き受けないとのことでした。逆説的ですが、そういうハウスメーカーこそ、厳格なインスペクションが必要ではないかという気がします。
(合意書がない)他のインスペクターの場合
ある大手インスペクターのプレゼンテーションによれば、検査した上で是正すべき点の指摘を行うが、ハウスメーカーが指摘を受け入れるか、社内基準に適合しているなどの理由で是正を拒否するかはハウスメーカー次第になるようです。
こうした場合でも、合理性のある指摘にはハウスメーカーもしっかりと応えているという印象を受けました。したがって、事前に合意していないから是正になかなか応じてくれない、ということもないのではないかと思います。
まとめ
三回にわたって、ホームインスペクターについて紹介してきました。コストパフォーマンスを追求する施主の方にはお勧めしにくいのですが、性能にこだわりがある方は、品質も性能のうちと考えてホームインスペクションも検討してみても良いのではないかと思います。
私たちは、経験豊富、こわもて(?)で、この分野では相応に有名なインスペクターにお願いしたのですが、これまでのところお願いしてとてもよかったと思っています。